Airy*Mint

　あれからもう一年。叔父の一周忌法要でした。
　親戚の僧侶があげる朗々とした読経の声を聞きながら、まっ青な空にぽこぽこと浮かぶ雲を見上げているうち、不謹慎にもついうっかり楽しい事をしているような気分になってしまいそうな。実に良い法要でした。
　「普段の行いが良いから」と誰かが言うと思ったけど、なぁに、一番言いそうなのは法要されるご当人だ。

　気持ちの良い読経に耳を傾けている最中、通路の端から現れた高齢の男女が帽子を取ってぺこりと頭を下げながら並んだ親族の間を通って行きました。
　どうも参るべき目的の墓が判らずに迷っているようなのでそっと目で追うと、数分後、迷いながら辿り着いた二列ほど向こうの墓石の前で、反対方向から来た数人と合流し、目指すお墓を見付けて喜んでいる様子なので他人事ながら安堵してたんですが｡｡｡
　中のどなたかが持参したラジカセから、大音量で何やら演歌チックな音楽を流し始めたのにはびっくり。挙げ句先ほど前を通って行ったお婆さんが今にも歌い出しそうな素振りをしているのを目にして、罰当たりな事に可笑しさを堪えるのに苦労しました。
　
　墓の主が好きだった曲なんでしょうけど趣味が悪い。どうせ曲を流すならロックかヘビメタ、せいぜいクラシックを、と心から願ってしまいました。何にせよ、身内とはいえ僧侶の読経を神妙に聞かなくちゃダメだろ？＞自分、と戒めつつ。

　暫く前からお隣宅の様子が普段と違うので、何かあったかと案じていたのですが、奥様が16日に亡くなっていたのだと今日、息子さんから聞かされました。
　3月だったかゴミ出しの帰りに同道した際に、いつもの不調に輪をかけて具合が悪いので病院に行くと話され、最後に姿を拝見したのは4月頃。入院をされているのだろうと気付いてはいたけれど｡｡｡

　転居して来たすぐから、ご近所の様子や地域の決まり事を丁寧に教えて下さり、その後も何くれとなく細やかな気遣いをして下さる方でした。
　先方は70代前半。うんと年が離れているから、仲が良かったと言うのとはちょっと違うのだけれど、たまに立ち話をしたり、買い物を引き受けたり、付かず離れずの緩やかなお付き合いを長くしていたので、急に居なくなってしまったことが今はまだ得心できずにいます。

　自分が居なくては何も出来ないのよ、といつも仰っていたご主人を残しての旅立ちはさぞ心残りと思うけれど、後はしっかりしたご自慢の息子さんに任せて、どうぞ安らかに。

　望みもしないのに寝苦しさで5時に目覚め、眠っている家人たちに遠慮して物音を控えて小1時間。
　そろそろ良いか、と音量低くTVをかけてキッチンに立ち、弁当の支度を始めた矢先、○○地方で大きな地震云々、の報道が聞こえてきました。
　え？どこぉ？と、しゃもじ片手に確認すると、なんと関東地方って言ってる！震度5弱ぅ？

　急ぎ階段の下まで行って見上げると、家の中で一番揺れやすい階段のライト、確かにゆらりゆらりしています。やーだ、ちっとも気付かなかった。
　寝ていて気付かなかったなら良く寝てたのね、な話だけど、起きていたのにそんな大きな地震に気付かないなんてどーした？＞自分、と我と我が身を怪しみかけたんですが、その後の地震情報を見ていると、家の辺りは震度1だったんですて。そりゃ気付かんわ。

　Twitterで話題が出てから思い出したんですが、そう言えば5年前の今日も夕方、調べたら今回と同じく千葉を(地域は違う)震源地とする地震があって、その時はこの辺り震度3。確かその時は震度のワリに随分揺れたと思ったんですが、話が出るまですっかり忘れてました。喉もと過ぎれば、って言うか、記憶力に問題アリ？

　ここ何日か朝晩ちょいと涼しくなり、おーすっかり秋めいて(にっこり)、とほっとしたのも束の間、ナニ？猛暑？随分早いお戻りで｡｡｡
　この数日並みの気温なら買い物を済ませてから公園でも歩こうか、なんて目論見がすっぽーんっと音立てて外れました。尤も少々立て込み中で、歩く気分でも無いのが実情。

　あれから9年？と聞いて5年めの記事を読み返しました。
　当時ですら「もっと以前の出来事」のように感じていた時間認識のずれは、妊娠中に見たイランの空爆、阪神淡路大震災の惨状、大きなビルが倒壊する瞬間、という自分の中で未だ苦く残る認めがたい「映像」が、どこか微妙に混線しているせいなのかも。

　心の痛みに効く(聞く)薬。青空(音出ます)。

　「ここだけの話」。昨日、義父のお迎えと書いたのは、実は病院に亡骸を引き取りに行った、の意です。
　9月13日13時27分。86年の生涯でした。2年前の認知症発症から一つ一つ段階を踏んで衰えていき、3月の入院後に一度は体調回復し退院、今回の入院で末期の大腸癌が見付かり手の施しようの無い状態、直接の死因は誤嚥からの肺炎でした。

　最後を待った、と言うのは言い過ぎですが、故人の友人知人は既に殆ど鬼籍に入り、仲間内では最後の一人。家族は皆今春からとうに覚悟を決めていたので、冷たいようだけれど特に悲しむでもなく、安置所ではお疲れさまでしたと声をかけました。

　ずっと昔、若い知人の葬儀の際に、葬儀場でのお隣さんは、写真を拝見するとご高齢のご婦人でした。ホールを楽しそうに駆け回る故人の孫かひ孫らしき子どもたちを見て、悲しくないのかと不思議だった心の澱が、ようやく解けた気がします。
　
　命には限りがあって、いずれ誰もが進む道であり、目の前から存在が無くなる悲しみはあるのだけれど、それなりに長寿を全うしたその悲しみは、胸の張り裂けそうな、とか号泣を誘うものではなく、言うなれば拍手で送ってあげたいようなそれ。どうぞ安らかに。

　※本当に備忘のための[ここだけ]の話^-^